戦略コンサルティングファームへの転職では、1社だけに絞らず、複数のファームを並行して受ける方が多くいらっしゃいます。一方で、勢いのまま同時に応募してしまうと、準備が整わないまま本命の面接を迎えたり、内定の回答期限が重なって落ち着いて判断できなくなったりすることがあります。
本記事では、複数ファームを並行して受ける際のスケジュールの組み方について、受験の順番、準備期間の確保、在職中の日程調整、選考が重なったときの対応、内定後の進め方という順に整理します。
※ 選考の進み方や日程調整の柔軟性は、ファームや時期、応募ポジション、担当者によって異なります。本記事は一般的な考え方をまとめたものです。
スケジュールを組むときの3つの前提
具体的な順番を考える前に、押さえておきたい前提が3つあります。
1つ目は、準備の完成度は受験を重ねるほど上がっていくということです。 特にケース面接は、独学の練習と本番とでは緊張感も情報量も異なります。何社か受けた後のほうが、受け答えが安定しやすくなるのが一般的です。
2つ目は、選考は自分のペースだけでは進まないということです。 面接官の稼働状況や採用計画によって、想定より早く進むことも、間が空くこともあります。「この日までにここまで進む」と決め打ちせず、幅を持たせて設計しておくことが大切です。
3つ目は、内定には回答期限があるということです。 期限の長さはファームや状況によって異なりますが、無期限ということはまずありません。最初に内定が出たタイミングで他社の選考が始まったばかりだと、比較したうえでの判断が難しくなります。
この3つを踏まえると、「準備が仕上がる順」と「内定が出そろう時期」の両方を意識した設計が必要になります。
受験順の考え方:練習と本命
「練習」に位置づけるファームの選び方
本命を後半に置き、それより前に数社を受けて実戦感覚を養う、という組み方は広く行われています。前半に受けるファームを選ぶ際は、次のような観点が参考になります。
- 選考形式が本命と近いと言われるファーム(練習の効果が高まります)
- 自分の経験との接点があり、志望動機を組み立てやすいファーム
- 選考のリードタイムが比較的短く、早めに結果が分かりそうなファーム
反対に、前半に置きにくいのは、応募のチャンスが限られている場合です。ファームによっては、不合格後の再応募までに一定の期間を設けているとも言われます。応募の制約については、事前に確認しておくと安心です。
本命をいつ受けるか
本命の目安としては、「ケース面接を対人で一定回数こなし、初見のお題でも時間内に筋道を立てられるようになった段階」が一つの基準になります。回数そのものよりも、次のような状態に達しているかで判断するとよいでしょう。
- 初めて見るお題でも、最初の数分で論点と切り口を言葉にできる
- 面接官からの指摘を受けて、その場で構造を組み替えられる
- 志望動機を、深掘りされても一貫した形で説明できる
「練習」は手を抜くことではない
ここで注意したいのは、前半に受けるファームを「練習台」と割り切りすぎないことです。前半のファームからも内定が出る可能性がありますし、そこが自分に合う場である可能性も十分にあります。志望度の低さが受け答えに表れると、選考そのものが成立せず、練習の機会としても十分に活かせません。あくまで「順番の話」であって、一社ごとに真剣に向き合う姿勢は変わらない、と考えておきましょう。
準備期間をどう確保するか
在職中に準備を進める場合、応募のボタンを押す前にどれだけ積み上げられるかが大きく効いてきます。おおまかな逆算のイメージは次のとおりです。
| 時期の目安 | 主に取り組むこと |
|---|---|
| 応募の2〜3か月前 | 情報収集、キャリアの棚卸し、ケース面接の基礎インプット |
| 応募の1〜2か月前 | 職務経歴書の作成・推敲、対人でのケース練習の開始 |
| 応募の直前 | 志望動機の言語化、想定問答の整理、日程の確保 |
| 選考期間中 | 各面接の振り返り、弱点の補強、次のファームへの反映 |
※ 上記は説明のための一般的な目安です。必要な期間は、現在の準備状況や職務経験によって大きく変わります。
特に見落とされやすいのが、選考期間中の振り返りの時間です。面接直後に、問われた論点、うまく答えられなかった箇所、面接官の反応をメモに残しておくと、次の面接への改善サイクルが回り始めます。ここに毎回30分を確保できるかどうかで、後半の完成度が変わってきます。
在職中の日程調整
現職の業務と並行して選考を受ける場合、日程の確保そのものが難所になります。
- 面接が入りやすい時間帯を把握する:始業前や終業後、昼休みの時間帯に設定できる場合もあります。可能な時間帯をあらかじめ整理し、候補日として提示できるようにしておきましょう
- 候補日はまとめて提示する:「この2週間でこの時間帯が可能」とまとめて伝えると、調整の往復が減り、結果的に選考も早く進みます
- 繁忙期を見越して逆算する:決算期やプロジェクトの山場が分かっているなら、その前後を避けた設計を検討します
- 有給休暇の取り方を考えておく:面接が重なる時期には半休を活用する方も多くいらっしゃいます。ただし、不自然なほど頻繁な取得は現職で目立ちやすいため、配分には配慮が必要です
- オンライン面接の環境を確保する:自宅以外で受ける可能性も含め、静かで通信が安定した場所を事前に押さえておきます
現職への配慮としては、転職活動をしていることを社内で話す範囲を慎重に考えることも大切です。内定と退職の見通しが立つ前に話が広まると、現職での立場が難しくなることがあります。
選考が重なったときの対応
複数のファームが同時に進むと、次のような状況が起こり得ます。
面接の日程が物理的に重なった
やむを得ず調整をお願いする場合は、早めに、かつ具体的な代替候補を添えて連絡するのが基本です。理由を細かく説明する必要はありませんが、誠実な連絡であることが伝わる書き方を心がけましょう。直前の変更が重なると、志望度の低さと受け取られる可能性もあります。
準備の時間が足りない
同じ週に複数の面接が入ると、一社ごとの準備が薄くなりがちです。この場合、共通で使える準備(ケースの基礎、経歴の説明、想定問答)と、個社ごとの準備(志望動機、ファーム研究)を分けて考えると効率が上がります。個社ごとの準備は直前に集中させ、共通の準備は日常的に積み上げておく形です。
一社の選考が想定より早く進んだ
本命より前に置いたファームが急速に進み、先に内定が出ることがあります。この場合の選択肢としては、本命側に選考を早めてもらえないか相談する、内定側に回答期限の延長を相談する、といった対応が考えられます。いずれも確約されるものではありませんが、相談してみる価値はあります。
内定の有効期限を踏まえた進め方
内定には回答期限が設けられるのが一般的です。期限の長さや延長の可否は、ファームや採用の事情によって異なります。
そのうえで、次の点を意識しておくとよいでしょう。
- 期限はオファー面談の場で確認する:口頭のやり取りだけでなく、書面や連絡文面で確認しておくと、後の行き違いを防げます
- 延長の相談は、理由と期日をセットで伝える:「他社の選考結果を待ちたい」という理由自体は、率直に伝えて差し支えないことが多いものです。ただし「いつまで待ってほしいのか」を明示しないと、相談を受ける側も判断できません
- 他社の選考状況を聞かれることを前提にする:面接や面談の場で他社の状況を尋ねられることは珍しくありません。事実に反する説明は避け、自分の判断軸に沿って率直に答えるほうが、結果として信頼につながります
- 辞退の連絡は早めに行う:進めないと決めたファームには、できるだけ早く、丁寧に連絡します。将来的に接点が生まれる可能性もある業界です
スケジュール例(仮定)
以下は、説明のために作成した仮定の例です。実際の期間や進み方は大きく異なります。
| 週 | 想定される動き |
|---|---|
| 1〜4週目 | 書類提出(前半グループ2社)/ケース練習を継続 |
| 3〜6週目 | 前半グループの面接/振り返りを反映 |
| 5週目 | 書類提出(本命グループ2社) |
| 7〜10週目 | 本命グループの面接/前半グループの結果が出始める |
| 10〜12週目 | オファー面談、条件確認、意思決定 |
この例では、前半グループの内定が出る時期に本命の選考が進行中であるため、回答期限の相談が必要になる可能性があります。設計の段階で「どこが窮屈になりそうか」を見ておくと、あらかじめ手を打ちやすくなります。
まとめ
選考スケジュールの設計とは、準備の完成度が上がる順番と、内定が出そろう時期を重ね合わせる作業です。前半で実戦感覚を養い、本命に向けて仕上げていく流れを基本としつつ、在職中の日程確保と振り返りの時間をどう作るかが実務的な鍵になります。想定どおりに進まないことも前提に、幅を持たせて組み立てておきましょう。
Strategy Talentでは、準備状況を踏まえた応募順の検討や、在職中の日程調整のご相談も承っています。まだ応募先を絞りきれていない段階でも、お気軽にご相談ください。