Case Practice

地域中核病院の病床稼働率と在院日数を質と両立して改善

  • コスト削減・オペレーション
  • 難易度:応用
  • 目安 30分
設問

あなたは、地方都市にある一般病床400床の地域中核病院の院長から相談を受けています。
「病床稼働率が75%、平均在院日数が14日で、経営が厳しい。稼働率を上げ、在院日数を短くしたいが、医療の質は絶対に落としたくない」とのことです。
何をどの順番で変えるべきか、方針を提案してください。

まず時間を計って、声に出して解いてみてください。行き詰まったらヒントを1つずつ開き、解き終えてから解説を確認します。

ヒント 1 を見る

在院日数を短くしただけでは、新たに入院する患者が増えない限り稼働率は下がります。「入口・滞在・出口」を同時に考えましょう。

ヒント 2 を見る

「医療の質を落とさない」を、再入院率や患者満足度など測れる指標に置き換えてから打ち手を検討しましょう。

ヒント 3 を見る

病床の回転を速めると、看護師など現場の負荷が増えます。従業員への影響とその対策を必ず添えましょう。

解説を表示する解答の流れ・数値例・評価のポイント・よくあるNG・発展問題

前提の確認

  • 対象:一般病床400床(仮定)の地域中核病院。病床稼働率と在院日数の改善を通じた経営改善が依頼内容
  • 前提となる考え方:在院日数の短縮は患者の早期の社会復帰につながる一方、無理な退院は再入院や患者・家族の不安を招く。「医学的に必要な期間は守る」ことを前提とする
  • 成果の定義:収支の改善に加えて、再入院率や患者満足度などの質の指標を悪化させないこと

解答の流れ

1. 論点と評価軸の設定

論点は「医療の質を保ちながら、病床という資源をより多くの患者のために活用するには、どこを変えるべきか」です。評価軸は、①年間の入院患者数と収入、②再入院率・患者満足度などの質、③看護師など現場の負荷、④地域の医療機関との関係の4つと置きます。

2. 現状の分解

病床稼働率75%、平均在院日数14日(仮定)とすると、年間の入院患者数は次のように求まります。

400床 × 365日 × 75% ÷ 14日 ≒ 年間7,800人

ここで重要なのは、在院日数を短くするだけでは稼働率が下がるという点です。入院患者数が同じまま在院日数を12日にすると、稼働率は約64%に落ちます。したがって、病床の回転は「入口(新たな入院)」「滞在(在院日数)」「出口(退院先の調整)」の3つを同時に見る必要があります。

  • 入口:紹介患者と救急からの入院が中心。近隣の診療所からの紹介は伸び悩んでいる(仮定)
  • 滞在:手術前の検査を入院後に行っている。診療科ごとに入院期間の標準がない(仮定)
  • 出口:退院先の施設や家族との調整が遅れ、医学的には退院可能な状態で平均2日ほど滞在している(仮定)

3. 打ち手の洗い出しと評価

領域 打ち手 効果(仮定) 質・現場への影響
出口 退院支援の専門部門を強化し、入院初日から退院先の調整を始める。介護施設や回復期の病院との連携を深める 在院日数を14日から12日へ 患者・家族への説明を丁寧に行う体制が必要
滞在 診療科ごとに入院期間の標準的な流れを整備し、手術前検査を外来で行う 在院日数の短縮を後押し 医師の裁量は尊重し、標準は「目安」と位置づける
入口 診療所との紹介の仕組みづくり(予約枠の確保、返書の迅速化)、救急の受け入れ体制の見直し 年間の入院患者数を1,900人増やす 救急の増加は現場負荷を高めるため、人員配置の見直しとセット

在院日数12日、稼働率80%を目指すと、年間入院患者数は 400 × 365 × 80% ÷ 12 ≒ 9,700人となり、現状より約1,900人増えます。1入院あたりの収入を、在院日数短縮の影響を見込んで70万円から65万円に下がる(仮定)と置いても、収入は約54.6億円から約63億円へ、8億円ほど増える計算です。ただし、患者数の増加に伴う看護師の負荷と人件費の増加は、別途見積もる必要があります。

4. 結論

「出口の整備 → 滞在の標準化 → 入口の拡大」の順で進めます。出口を先に整えるのは、入口だけを広げると病床が足りず、救急の受け入れを断る事態を招くためです。質の指標として、退院後30日以内の再入院率と患者満足度を月次で追い、悪化した場合は在院日数の目標を緩めます。また、現場の負荷を測るため、看護師の残業時間と離職率も同じ表で確認します。

面接官とのやり取りの例

候補者:「在院日数を短くしても、新たに入院する患者が増えなければ稼働率は下がると考えています。現在、紹介や救急からの入院はどのような状況でしょうか」

面接官:「救急は受け入れを断る日もあり、診療所からの紹介は横ばいです」

候補者:「救急を断っているなら、病床が空けば受け入れられる需要がある、と理解しました。次に、退院が遅れている理由を確認させてください。退院先の調整に時間がかかっているケースが多いのではないかと想像しています」

面接官:「その通りで、医学的には退院できる状態で平均2日ほど残っています。ただ、看護師からは『これ以上早く回すと患者さんへの説明が追いつかない』という声があります」

候補者:「その懸念は重要です。回転を速める分、退院支援を担う専門の人員を増やし、看護師の負担を増やさない設計にします。加えて、再入院率を質の指標として並行して見ることで、『早く出すこと』が目的化しないようにします」

面接官:「診療科によって医師の考え方も異なります。標準化にはどう向き合いますか」

候補者:「標準は目安として位置づけ、逸脱した場合はその理由を記録して振り返る仕組みにします。医師の判断を縛るのではなく、ばらつきを見える化するのが目的です」

評価のポイント

観点 見られていること
構造の理解 在院日数の短縮だけでは稼働率が下がることに気づき、入口・滞在・出口を同時に扱ったか
質との両立 再入院率や患者満足度を指標に組み込み、目標を緩める条件まで示したか
現場への配慮 看護師や医師への影響を考え、負荷を増やさない設計にしたか
順序づけ 出口を先に整える理由など、打ち手の順番に論理があったか

よくあるNG

  • 「在院日数を短くすれば収入が増える」と単純化し、入口の需要を確認しない
  • 医療の質を「配慮します」と言うだけで、測る指標を示さない
  • 医師の判断を標準で縛るような提案をし、現場の反発を想定しない

発展問題

同じ病院で、地域の高齢化により回復期のリハビリを必要とする患者が増えています。急性期の病床の一部を回復期向けに転換することの是非を、経営と地域の医療ニーズの両面から論じてください。

※ 本問の数値・組織はすべて説明のための架空の設定です。

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