食品メーカーの物流費を欠品率を保ったまま15%削減する
- コスト削減・オペレーション
- 難易度:標準
- 目安 25分
あなたは、調味料やレトルト食品など常温の加工食品を製造するメーカーの物流担当役員から相談を受けています。
「物流費が売上の5%から6%に上がり、利益を圧迫している。2年以内に物流費を15%削減したいが、小売や卸に対する欠品率は今の水準を維持したい」とのことです。
どこに削減余地があるか、どのように15%を実現するか、方針を提案してください。
まず時間を計って、声に出して解いてみてください。行き詰まったらヒントを1つずつ開き、解き終えてから解説を確認します。
ヒント 1 を見る
物流費を「幹線輸送」「配送」「保管・荷役」「管理」に分けると、金額の大きい費目と、上昇の原因になっている費目が見えます。
ヒント 2 を見る
配送費はトラックの台数で決まります。積載率が低いなら、同じ量をより少ない台数で運ぶ余地があります。
ヒント 3 を見る
拠点を減らすと保管費は下がりますが、納品までの時間が延びて欠品につながることがあります。削減額と欠品率の両方を見ましょう。
解説を表示する解答の流れ・数値例・評価のポイント・よくあるNG・発展問題
前提の確認
- 対象:工場から物流拠点を経て、卸・小売の物流センターへ納品するまでの物流費。輸送は協力運送会社に委託し、拠点は自社運営と委託が混在する
- 規模:年商1,000億円、物流費60億円(売上比6.0%、仮定)。3年前は50億円(5.0%)だった
- 制約:納品率(受注量に対して期日どおりに納品できた割合)99.5%を維持する。15%削減とは、物流費を60億円から51億円へ9億円減らすこと
解答の流れ
1. 論点と評価軸の設定
論点は「納品率を落とさずに、年9億円の物流費を減らす方法は何か」です。評価軸は、①削減額、②納品率への影響、③顧客・従業員・協力会社への影響、④実現までの時間の4つとします。
2. 現状の分解
物流費60億円の内訳と、上昇の原因を次のように置きます(仮定)。
| 費目 | 金額 | 3年前からの変化と考えられる非効率 |
|---|---|---|
| 幹線輸送(工場→拠点) | 12億円 | 運賃の上昇。往路のみで復路は空車が多い |
| 配送(拠点→卸・小売センター) | 27億円 | 運賃の上昇に加え、小口・多頻度の納品でトラックの積載率が55%まで低下 |
| 保管・荷役(全国8拠点) | 15億円 | 拠点が多く、拠点ごとに在庫と人員を持つため固定費が重い |
| 管理・システム・その他 | 6億円 | 配車が拠点ごとの手作業で、全体の最適化ができていない |
最大の費目は配送で、積載率の低さが原因です。卸や小売センターが毎日少量を発注するようになり、1台あたりの積み荷が減りました。また、8拠点は担当地域が重なる部分があり、在庫が分散して保管費と拠点間の横持ち輸送を生んでいます。
3. 打ち手の洗い出しと評価
| 打ち手 | 削減額(仮定) | 納品率・関係者への影響 |
|---|---|---|
| A. 積載率の向上:納品頻度を毎日から週3回に見直し、パレット単位の発注を促す。積載率55%→70% | 台数が55 ÷ 70 ≒ 0.79倍になり、配送費27億円の約2割にあたる5億円が上限。全顧客には適用できないため 4億円 | 顧客側の在庫が増えるため、営業部門と一体で納品条件を交渉する。ドライバーの待機・積み下ろし時間は減る |
| B. 拠点の統廃合:8拠点を5拠点に集約 | 拠点の固定費9億円のうち3拠点分の3億円強を減らし、配送距離が延びる分1億円を差し引いて 2億円 | 遠方の顧客への納品時間が延びる。翌日納品できる範囲を確認して残す拠点を選ぶ。閉鎖拠点の従業員には配置転換と移転支援が必要 |
| C. 共同配送:地方エリアの小口配送を、同じ小売センターへ納品する他の食品メーカーと共同化 | 対象は配送費の3割の8億円。共同化で25%減の 2億円 | 納品時刻の調整が必要。競合他社との協業について販売部門の理解を得る |
| D. 幹線輸送の見直し:大型車への切り替えと復路の活用、長距離は鉄道へ | 12億円の約1割で 1億円 | 鉄道は輸送日数が延びるため、拠点在庫を増やして納品率を守る |
合計で9億円となり、目標の15%に届きます。Aは効果が最も大きい一方で顧客との交渉を伴います。Bは在庫が集約されることで拠点ごとの安全在庫が減り、同じ在庫量でも欠品にはむしろ有利に働きます。
4. 結論
積載率の向上(A)と拠点の統廃合(B)を柱に、共同配送(C)と幹線輸送の見直し(D)を加えて、2年で9億円の削減を目指します。順序は、顧客交渉が不要で自社で決められるBとDに初年度から着手し、AとCは営業部門と協力して主要顧客から順に広げます。納品率は地域別・顧客別に週次で確認し、99.5%を下回った地域では納品頻度の見直しを一時的に戻します。従業員面では、閉鎖する拠点の人員に集約先への配置転換を優先して提示し、協力運送会社には台数減の見通しを早めに共有して、契約の見直しを段階的に進めます。
面接官とのやり取りの例
候補者:「まず物流費の内訳を確認させてください。運賃の上昇は業界全体の要因だと思いますが、それだけで売上比が1ポイント上がったとは考えにくく、配送の仕方に原因があるのではないかと見ています」
面接官:「配送費が27億円で最大です。運賃の上昇に加えて、小売や卸が毎日少量を発注するようになり、トラックの積載率が55%まで下がっています」
候補者:「積載率が55%なら、納品の頻度や単位を見直せば台数を減らせそうです。ただ、頻度を減らすと顧客側の在庫が増えるため、納品条件の交渉になります。顧客との条件は誰が決めていますか」
面接官:「営業部門です。物流部門は決まった条件で運ぶだけになっています」
候補者:「では、営業部門と一緒に、物流コストの安い納品条件を顧客に提示できる仕組みが必要です。次に拠点についてですが、8拠点の担当地域は重なっていますか」
面接官:「関東と関西にそれぞれ2拠点あり、担当地域は一部重なっています。統合の話は以前からありますが、納品が遅れる懸念で進んでいません」
候補者:「重なっている拠点を統合すれば保管費が下がり、在庫も1か所にまとまるので欠品にはむしろ有利です。懸念は遠方の顧客への納品時間なので、翌日納品できる範囲を地図で確認したうえで、統合する拠点を選びます」
評価のポイント
| 観点 | 見られていること |
|---|---|
| 論点設定 | 「15%」を「9億円」に置き換え、欠品率の維持を制約として明示したか |
| 分解 | 物流費を費目別に分け、上昇の原因である積載率と拠点配置に行き着いたか |
| トレードオフ | 納品頻度の見直しや拠点集約が欠品率に与える影響を、対策とともに示せたか |
| 関係者への配慮 | 顧客・従業員・協力運送会社への影響を明示し、進め方に織り込めたか |
よくあるNG
- 「運賃を値切る」と提案し、ドライバー不足で運賃が上がっている環境を無視する
- 拠点の統廃合だけで15%を達成しようとし、納品時間の延長が欠品につながる点に触れない
- 納品頻度の見直しを物流部門だけで決められると考え、営業部門や顧客との交渉を織り込まない
- 各施策の削減額を足し合わせただけで、実現の順序や施策どうしの重複を検討しない
発展問題
同じメーカーが、来年から 冷蔵の総菜商品 を新たに扱うことになりました。冷蔵品は常温品と同じトラックや拠点では扱えず、納品までの期限も短くなります。今回の削減計画のうち見直しが必要な打ち手と、冷蔵品の物流費を抑える考え方を示してください。
※ 本問の数値・組織はすべて説明のための架空の設定です。
解いた内容、プロの目で確かめませんか。
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